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森田実氏のブログより
[2011-05-05]

まず、これほどの大災害が起きたら、内閣総理大臣は直ちに各省庁の事務次官を招集して対応を協議しなけれぱいけません。
そして野党の皆さんにも、伏して協力を仰ぐものです。
にもかかわらず、菅直人首相がやろうとしたことは、自己保身と政権の強化としか映りません。

 政治主導というのは、政治家が指揮を執って役人(=官僚)を動かし、日本が持てるパワーをフル回転させる。
そして責任は、最後に政治家がすべてとる。
そういうことを言うのです。
そのためには内閣総理大臣自らが捨て身になり、全責任を引き受けて、霞が関を中心とする約三十万人の役人が存分に働ける環境をつくる。
それが政府の役目です。

 ところが菅首相は、官僚を動かすどころか、政治的パフォーマンスで自分だけ動いて右往左往。
統治能力ゼロです。
政治家としての責任に言及もせず、小手先の策を練るばかりでした。
この機に乗じて長期政権化を目論んでいる。
国を挙げての大危機に、自分たちの権力を強めることぱかりに躍起になっています。

 そもそも、昨年六月に提出された「津波対策推進に関する法律案」もたなざらしのままでした。
自民党と公明党の国会議員が、こういう大災害を想定して提案した法案にもかかわらず、菅首相はまったく無視してきたのですから。


 チーム力の公明党はパワーと信念がある
 この大震災で真っ先に現地に駆けつけて働いたのが公明党の国会議員でした。
震災直後、まず井上幹事長が宮城県入りし、被災地の要望を聞き、国会に戻って手を打っていました。
地元の議員もわが身を顧みず救援活動に奔走していました。
これが草の根の政治をする公明党の力だと思います。
チーム力とパワーと信念がある。
ここが民主党と大きく違うところです。

 じつは、一年前に菅直人さんが首相になったとき、「これは歴史上またとない大失敗だ」と私は思いました。
人としての器が小さいだけじゃない。
根本の精神が崩れているのです。

 政治家は、命を懸けて国民のために奉仕することが原則です。
孟子の言葉に「民を視ること傷むが如し」というのがあります。
これは日本で言う「わが身をつねって人の痛さを知れ」と同じで、人の痛みを知らずして国民のための政治などできやしません。
菅首相は退陣すべきです。

 福島第一原子力発電所事故について、菅政権は一貫して「東電(東京電力)のミスだ、東電が悪い」と責任転嫁に終始していました。
確かに東電に責任はありますが、原発は国策でやってきた仕事です。
いわば東電は従で、政府が主。
福島第一原発事故は、あのチェルノブイリ原発事故と同レベルと見なされ、深刻な世界的問題に発展しています。
この責任は、まず政府が負わなくてはなりません。

 放射能による農畜産物の出荷制限と風評被害については、公明党がいち早く「つなぎ無利子融資」を提案しましたが、当初、政府が発表した出荷制限は農家を袈裟がけに切りつけるような非情なものでした。
これまでなら政府方針を発表する前に「補償は政府が責任を持ちます」と、必ず事前に根回しをして生産者を安心させていました。
ところが今回は、予告もなしにバッサリ切った。
おまけに補償責務は東電にあると言わんばかりに責任をなすりつけています。
人々を絶望の淵に追い込むような、これほど冷酷で情け容赦もない政治は、私の知る限りでは初めてです。


 外国人記者が見た「奇跡の光景」
 大震災による被災者を目の当たりにした外国のプレスは、口を揃えて日本人の国民性を絶賛しています。
外国人記者が見たものは、家も家族も失いながら、それでも他人を思い、助け合って生きようとしている人々。
暴動もなく、モラルを守り、水一つもらうにも順番に辛抱強く待っている。
彼らにとってそれは「奇跡の光景」だったわけです。
私はその背景に、日本の風土と母の力を感じました。

 古来、日本は災害列島です。
限られた国土の中で、絶えず地震や津波、豪雨や豪雪という災害に見舞われてきました。
しかし狭い日本では、生活していたその場で再建していくしか手立てがありません。
助け合い、協力し合って立て直すしかないのです。
そうした風土こそが日本のモラルを作り上げてきたのです。
そして、その根底にあるのが母の力です。

 一九四五年、第二次世界大戦の敗戦を抱きしめて、日本人はみな絶望に打ちひしがれました。
とくに男たちはぼうぜん自失して、しぱらく何も手につかなかった。
ところが母親たちは、敗戦のその日から生活のために働き始めたのです。
最愛の人を失った悲しみをこらえ、育ち盛りの子どもに食べさせるために、ちょっとした土地にもイモを植え、ただただ真面目な努力で家族を養ってきました。
私の母も、周りの女性たちもみなそうでした。

 私は、こうした女性たちによって日本は支えられ、形成されてきたのだと思います。
世界各国から賞讃される「奇跡の光景」の背景には、脈々と受け継がれた母の忍耐強さと、風土がもたらした助け合いの精神が流れているのです。
そして、それがまた明日の日本をつくっていくのだと信じています。
(談)》
[以上の談話は『第三文明』6月号のインタビューで私が語ったことである。
正確に記録していただいたことに感謝します/森田実]




 



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